ニュースの概要
新潮QUEが、世界的なチェーンを含むカフェ、居酒屋、ファストフード、外食店の全174メニューを対象に、中国産の食材が使われているかどうかを点検し、実名でリスト化した。とくにスイーツ類は、果物のシロップ漬けや加工品、冷凍の生地、乳原料などを通じて、輸入食材が入り込みやすい分野として取り上げられている。外食は、スーパーの生鮮品と違って原産地の表示義務が弱い。そのため、消費者が口にする料理の素材がどこから来たのかは、店頭ではほとんど見えない。今回の特集は、その見えにくさを一覧という形で可視化した点に意味がある。ただし、リストの項目が即座に危険を意味するわけではない。読み手には、不安と事実を切り分けて受け止める冷静さが求められる。
引用元: 世界的チェーンのスイーツに気を付けろ カフェ・居酒屋・ファストフード・外食の「中国産食材」全174メニュー総点検「実名リスト」(新潮QUE)
分析・見解
原産地が見えない外食の表示制度という構造
日本の食品表示は、スーパーで売る生鮮品と加工食品では比較的細かく決まっている。たとえば加工食品では、原材料の重さで最も多いものについて原料原産地を示す制度が、2022年4月から本格的に始まった。ところが外食は、この枠の外にある。メニューに産地を載せるかどうかは、店の判断に任されている部分が大きい。
国産をうたう店でも、すべての食材が国産とは限らない。逆に、輸入品を使うこと自体は違法でも不正でもない。つまり今回のリストの本質は、中国産が悪いという話ではない。消費者が確かめる手段を持たない領域で、企業側の説明が追いついていないという問題である。
スイーツが輸入食材に頼りやすい三つの理由
スイーツが取り上げられたのは偶然ではない。理由は大きく三つある。第一に、フルーツの加工品である。みかんやパイナップル、桃などの缶詰やシロップ漬けは、世界的に見て中国やタイ、東南アジアが大きな産地だ。第二に、季節に左右されない通年の供給である。国内の果実は収穫期が限られるが、チェーン店は一年中同じ味と量を出さなければならない。第三に、価格である。1個数百円のデザートでは、原価に占める素材の比率が小さく、安定して安い加工原料を選ぶことが経営上の合理性になる。
世界的チェーンは、全世界で同じ品質を保つために、複数の国の工場から原料を集めて組み合わせることが多い。日本の店舗向けでも、原産国が一つに決まらない場合がある。
食の安全をめぐる不安と、数字が示す現実
中国産食材への警戒感は、2008年の冷凍餃子事件や、2014年の期限切れ鶏肉の問題を経て、日本の消費者の記憶に深く残っている。一方で、輸入食品の安全確認は水際で行われている。厚生労働省の統計では、輸入食品の検査で違反が見つかる割合は、届出件数に対して0.1%前後にとどまる。つまり、数字の上では多くが基準を満たして流通している。
ここに生まれるのが、不安と事実の溝である。感情的な拒否反応は、企業にとって見えないコストになる。事実としては安全でも、説明が足りなければ、客は黙って別の店を選ぶ。炎上するのは違反そのものより、隠していたように見える対応のほうだ。
独自の視点:リストは企業にとって無料の監査である
外から見ると、実名リストは攻撃に映る。しかし経営の目で見れば、自社の調達の弱点を第三者が無償で洗い出してくれた資料でもある。どのメニューのどの素材が、顧客の目にどう映るのか。それを知らないまま運営していた企業ほど、次に同じ指摘を受けたとき対応が遅れる。今後は、取材やSNSで調達の中身が掘り起こされる前提で、自社から先に開示する企業と、受け身で説明を求められる企業との差が、信頼の差として表れるだろう。
ビジネスへの影響
外食企業が今すぐ着手すべき三つの棚卸し
まず、全メニューの原材料を、原産国まで含めて一覧にすることが出発点になる。多くの企業は仕入れ先の名前までは把握していても、その先の原料の産地までは追っていない。次に、産地を変えられない素材と、代替できる素材に分ける。最後に、問い合わせを受けたときに誰が何日以内に答えるかを決める。この三つが整っていれば、突然の取材やSNSの指摘にも慌てずに済む。
開示と調達の見直しをコストの面から考える
国産への全面切り替えは、原価を2割から3割押し上げることもあり、現実的ではない場合が多い。そこで有効なのは、看板になる数品目だけを国産や産地指定にし、残りは原産地を正直に示す方法だ。すべてを変えなくても、言えることを増やすだけで信頼は積み上がる。産地の分散も大切である。特定の国に原料が偏ると、為替や輸出規制の変化で一気に価格が跳ね上がる。複数国から調達する体制は、安全だけでなく経営の安定にも効く。
消費者への伝え方が売上を左右する
公式サイトに原材料と産地の一覧を載せ、問い合わせ窓口を明記するだけでも、不信感は大きく減る。モバイル注文のアプリに、アレルギー表示と並べて産地を表示する取り組みも考えられる。外食各社が競っているデリバリーやクーポンの施策と同じ重さで、情報開示を顧客体験の一部として設計できるかが、これからの差になる。